Book`s Page 2

スプリンター
小山ゆう 著


100m走の陸上選手を題材にしたあまり他では見ることのない小山ゆうの異色作であり意欲作。知名度は低いマンガですが、私個人としては、当時かなりハマったマンガの一つです。100m走におけるトレーニングや勝負もストーリーに組み込まれていますが、それよりもテーマは100m走のアスリートが9秒台に突入するスピードを極めた時、スピードの向こう側の世界に出会えるという精神性や神秘性を重要視しています。酸欠によるランナーズ・ハイという見解を示す一方で、そうではないという走者の心情や感覚などを描いています。主人公は日本有数の財閥を捨てて一人アスリートになる決意をする結城光、ヒロインは日本記録を打ち出し世界的ランナーに成長する同じ100m走者の水沢裕子、その他、世界的ロックスターの座を捨てアスリートに転向するスティーブグラハム、当時カールルイス全盛期のためそれをモチーフにした世界最高スプリンタージャックスペンサーなど、なかなか面白い人物設定を持ったキャラクターが揃っています。