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夕焼けの詩
西岸良平 著


西岸良平のライフワークとも言える長編作品です。他の追随を許さない圧倒的な着眼点、タッチ、独創性で類するもの皆無ですね。夕焼けの詩は、昭和30~40年代を舞台にした下町感溢れる一話完結型のマンガです。当時の生活風景や時代背景などをテーマにしていて、昔を懐かしむ感じで読み進めるので終始落ち着いて読むことができます。疲れている時などは、心の平穏を取り戻すのに最高ですね。絵のタッチが凄いです。決して上手いわけではありません。しかし、顔の輪郭の取り方などは、他の漫画家では絶対に見られない描き方なので、どの作品でも一発で西岸良平の作品だと分かってしまいます。ある意味、タッチだけなら手塚治虫を超えると思います。もう一つの特徴はスクリーントーンを一切使わないところですね。ベタ、斜線くらいで手描き感が満載で紙面が非常に柔らかく感じます。漫画家がスクリーントーンを使わないという勇気は相当だと思います。マンガ界で圧倒的なone & onlyを貫く貴重な存在です。